「直売所の商品単価を上げたい…」生産者にお願いをしても安いまま。どうすれば?

先日、道の駅と農産物直売所の関係者の方々を対象にした、講演の機会をいただきました。その内容については、こちらをご覧ください。その際、あるご相談をいただきました。

商品の単価を上げて欲しいと思っています。出荷者である生産者さんにお願いをするのですが、皆さん嫌がって、値段を上げてくれません。全体的に商品の価格を上げてもらうには、どのような方法があるでしょうか?

道の駅・直売所の方々を対象にした講演の参加者さん

高齢化がすすむ生産者の現状

上記、ご相談の背景を少し補足すると。ご相談くださったのは、直売所の運営側のかたです。地元の生産者さんがお店に農産物を出荷してくださっている。生産者の高齢化が進み、地域の年配の方々が中心。

ここは想像の部分ですが、年配の生産者さんはお野菜を出荷することで大きな利益を得たいと思われていない。ご自身がつくられたものが売れる、その喜びを味わえることに主眼を置いている方もいらっしゃる。

…となると、商品の単価もそれほど上げる必要はない。

「お店に来られたお客さまが喜んで買って行ってくださる値段でいい」
「もし高くして、売れ残ってしまう方が心配だ」

あくまでも想像の域ですが、そう感じられているかもしれない。

若手生産者が、地元の直売所を敬遠する理由

一方、地域には少数ながらも若手の生産者さんもいらっしゃるはず。これはどこの地域にも当てはまる話だと思います。

若手の生産者さんは、新しいことにも意欲旺盛。どんどんチャレンジされる(※年配の方がそうじゃない…というつもりはありませんが)。労力や価値に見合った対価を得たい。そう思われている方も多いのではないでしょうか。

しかし、地元の直売所を見ると…、冒頭のご相談のとおり。年配のそれほど利益を求めていない生産者さんが安めの単価の出荷されている。若手の生産者さんからすれば、

「そこそこの価格をつけて出そうとすると、割高に感じられるのでは?」
「お客さまに敬遠されて、売れ残るのでは?」
「だったら、他のお店に出した方が売れる…」

そう考える方がいらっしゃっても、おかしくないのではないでしょうか?

生産者と直売所の二極化

私が住む高知県では、直売所の二極化が進んでいるように感じられます。お客さまの集まる、大規模な道の駅や直売所に、商品が集まる。一方、小規模なお店では、商品を出荷する生産者が減少する、生産者の集中化が起きているように感じます。

  • 大規模な道の駅・直売所:生産者・商品が集中
  • 小規模な道の駅・直売所:生産者・商品が減少

お客さまは敏感です。商品が集まるお店に、人が集まります。人が集まり、賑わうということは、商品がよく売れるということです。生産者もその辺りはシビアなので、お客さまが集まるお店に商品を出荷したいと思います。

逆に、商品が集まらないお店には、ますます人は集まりません。お客さまが少なくなるということは、商品が売れにくい。結果的に、出荷する生産者も、地元の年配の生産者が中心となり、前述のように若手は多少離れても、売れる直売所に出荷するようになります。

いわゆる、好循環と悪循環が起きるのです。

直売所の商品を値上げしたい

さて、冒頭のご相談に戻ります。

若手の生産者さんも出荷してくれるように、商品の全体的な単価を上げるにはどうすればいいか?

個人的には、2つお伝えしたいことがあります。まず一つ目は、

単価UP作戦その1.「まずは響く人からアプローチする」

ちょっと言葉が悪いのですが、話をしても通じない方はどこにもいらっしゃいます。

会社の組織でもそう。社内で新しい取り組みを進めることになった。できれば、従業員全員に取り組んで欲しい。しかし、、現実のところ、どれだけ話しても、どれだけエネルギーをかけても、動いてくれない人はいらっしゃいます。残念ながら…(苦笑)

そのなかなか火がつかない方に、時間とエネルギーを注ぐのも大事です。っが、一方でスタートしたての際は、響く人から突破口を開いてもらう。いわゆる、意欲的な方に先例をつくってもらって、あとから追随してもらう。

まずは、一人でも二人でもいいので、前向きな話を聞いてくれる生産者さんに事情を説明する。そして、単価を上げてもらう。

「単価を上げても売れますから、上げてもらえませんか?」

お店の方がそう言われれば、普通に考えたら、ちょっとアンテナを立てている方であれば、「わかりました」となると思うのです(…現実は違うのかな?(苦笑))

単価UP作戦その2.「単価を上げても売れる方法を提案」

何度か経験があるのですが、生産者さんを対象にした「野菜の袋詰め、パッキングの魅せ方」セミナーの依頼をいただいたことがあります。

ご存知の方であれば、すぐピンとくると思います。野菜って、魅せ方次第で、10円、20円。いえ、2~3割なら値段を上げても、売れるものです。

例えば、普段1袋100円で販売しているオクラでもナスを、150円に値上げして売ることも可能だと思っています。ちょっとした工夫をすることで、少しくらいの値上げはカバーできます。例えば、こちらをご覧ください。

直売所で単価を上げても、売れる方法(1枚のタグを入れる)
「安納芋」と手書きで書かれた紙がはいった商品

ご覧のとおり、安納芋が2本はいった袋です。たしか、道の駅か直売所で購入したものです。実はここに、値上げしても売れる、その秘密が隠れています。

もう、お分かりですね(笑)そう、野菜の袋のなかに1枚タグを入れることです。

年間売上トップの生産者が実践していたこと

話し出すと長くなるので、簡潔にお伝えします。大阪の産直店で働いていたとき、毎月末、商品を出荷してくださる生産者さんに、精算書をお送りしていました。

「今月は、この商品がこれだけ売れました」
「今月の売上は、●●です」

いわば、生産者さんのお店での成績表のようなものです。っで、ここで興味深い点がありました。ほぼ毎月、売上トップ10の生産者の顔ぶれが同じ。同じメンバーが、売上を独占していたのです。

さらに、その売上トップ10の生産者には、いくつかのある共通点がありました。その一つが、「タグ」の封入です。

「●●農園」や「化成肥料などをつかわず、つくっています」など、何かしらのメッセージを添えたタグ(紙)を野菜の袋のなかに入れられていました。

生産者の手取りを上げる講習会を開催

単価UP作戦その2.に戻ります。「単価を上げても売れる方法を提案」とは、今お伝えしたようなタグを入れたり、野菜のパッキングの工夫などのノウハウを生産者さんにお伝えすることです。

「このような工夫をすると、1袋の単価を上げても買っていただけますよ」

生産者さんにお伝えするのです。

と言っても、ただお伝えするだけでは、聞く耳を持ってくれない生産者さんも多いかもしれません(苦笑)そこで、一つの工夫として、勉強会のようなものを開催する。私(臼井)のような人間を引っ張ってきて、生産者さんに集まってもらう。

そして、「生産者さんの手取りを上げる」講習会を開催する。当然ながら、参加されない方もいらっしゃいますが、話は先ほどと同じ。先例、成功事例をつくってしまうのです。っで、「やらないと損…」の状態をつくりあげる。

生産者さんの身にもなるし、お店側の単価を上げることも実現できる。言葉でいうほど簡単じゃないですが、一つの作戦としてはアリではないでしょうか。

まとめ

直売所の商品の単価を上げるには、どうすればいいか?今回、提案する方法は、2つ。

  1. まずは響く人からアプローチ
  2. 単価を上げても売れる方法を提案

何でもそう、改革にはエネルギーと時間がかかります。だからこそ、多くの方が手をつけないし、実現した際の喜びや利益も大きいのではないでしょうか。

本文でもお伝えしたように、直売所の二極化はシビアな話です。売れるお店に、生産者は集まり、出荷物も集まる。その逆もしかり。

「生産者が出荷したい直売所」を目指して、様々な取り組みが必要なタイミングではないでしょうか。

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